この年末年始の1週間、実益あることなど何一つしていないことを断言しておこう。
異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでもいい布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。
責任者に問い出す必要がある。責任者はどこか。
そんな私も年末年始、あるものにハマっていた。2008年に出版された森見登美彦氏原作の小説『四畳半神話大系』である。当記事の冒頭の部分で気づいた者も多かろう。
かくして私は、その小説に登場する「カステラ」を一度食ってみたくなった。作中では小津が、主人公の部屋に持ってきたあの「カステラ」である。
モデルになったと言われている「京名菓 大極殿本舗」が京都の烏丸駅の近くにあるという噂を聞きつけ、大阪からおよそ3時間かけて行ってきたのである。
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京名菓大極殿本舗について
店は京都の烏丸駅の近くにある「京名菓大極殿本舗」である。建物と看板の出で立ちは老舗そのもので、風格があり、私は期待を抱かせた。
明治18年に創業され、二代目が長崎でカステラ製造の技術を習得し、京都でいち早くカステラ製造を開始されたという。
全国菓子博覧会においても毎回のように賞を受けられる全国でもトップクラスの和菓子屋さんなのだそうだ。
店先には、カステラの他にも数種類の和菓子が並べられていた。私はどれも食べてみたくなったが、財布の中身を見るとそれは叶いそうになかった。
お徳用もあり、400円(税込)で購入することもできるようだ。
私はさらに店の中に入り、カステラを1本購入した。1188円(税込)であった。因みに、本編に出ていたような巨大なカステラは販売されていないようだ。
京名菓大極殿本舗のカステラ
さっそく家に持ち帰り、一人食べてみることにした。背景が「畳」なのは、私なりのこだわりである。
いざ、カステラを袋から取り出してみると包装紙に包まれていた。
包装紙には「カステイラ」と記されている。なんでもこの包装紙は復刻されたものらしい。いささか京都の歴史というか風情を感じるデザインになっている。
原材料は、卵・砂糖・小麦粉・水飴・蜂蜜・味醂・トレハロースで作られている。購入したのが1月6日のため、賞味期限はおよそ1週間ほど持つようである。手土産としてもちょうどいい。
開封してみると、「春庭良」と書かれており、これで「かすてら」と呼ぶそうだ。なんともオシャレな当て字であろうか。
開けてみると、半分のカステラが2本入っていた。そして私は、とっさに感じた。
「これは、あのシールではないか!!」
見覚えのあるシールに、私のテンションもおのずと上がってきた。
ついに、開封の瞬間である。
大阪から片道3時間かけて、わざわざ「カステラ」を購入するために京都まで行って来たのだ。もはや手の施しようのない阿呆としか言いようがない。阿呆と呼ばれても仕方がない。しかし、私はここぞというときには敢えて阿呆の汚名を着ることも辞さない男だ。
「なんということだ!箱の開き方が同じではないか!!」
阿呆な私はついつい興奮して声を荒げてしまった。
乗っていた紙を取ってみると、なんとも美しく美味そうなカステラが表れた。自分で切る必要があるところまで同じである。
このカステラを裏返すと、底にはザラメがついていた。
一口食べてみると、その味は無類であった。
驚くほど風味豊かなカステラであり、そのたぐいまれな味に満足したのは言うまでもない。
私のまとめ
四畳半神話大系好きならば、是非一度は食べてみることをオススメする一品である。
こんなに美味いカステラと出会えることはまたとなかろう。